ヨシアキと和平

和平は生い立ちをスネークに語る際、こう言います。

俺は日本に残り、自衛隊に入った。22だった。治療費と生活のため…といっても、いくらでも働き口はあったはずだ。
そこまで解っていて、それでも俺は、他に自分の道を思いつかなかった。

私はこの言葉がずっと引っかかっていました。この言葉の意味は、和平は米軍基地に近いところで商売をしていて、身近な存在として軍隊があったから?自分の体力に自信があったから?米兵である父への気持ちの表れ?そのどれもが選択するひとつのきっかけにはなったかもしれません。ですが、『他にない』と言い切る強さは感じませんでした。

PWをクリアしてからしばらくして、和平周辺の環境をきちんと知りたくなりました。そこで出会った本が『ヨシアキは戦争で生まれ戦争で死んだ』です。
和平はGIベビー(戦後の占領下、進駐軍と日本人女性の間に生まれた子ども)です。その子どもたちが現実にどう生きたのか、GIベビーを扱った書籍を探していたときに出会いました。
結構前から度々話題にはしているのですが、感想を書いたことがなかったので以下に記しておきます。
<以下書籍のネタバレ含みます>

ヨシアキ

『ヨシアキ』は、母ツギエが見知らぬ米兵から受けた暴力で生まれました。ツギエは家族や知り合いに対してヨシアキが誕生した理由、暴力をふるった米兵の存在をひた隠しにし、必死に育てようとします。ヨシアキが成長していくにつれ、知り合いになんだかこの子は顔立ちがくっきりしているね(目鼻立ちがはっきりしていてどこか外国人のような顔つきだというニュアンス)と何の気なしに指摘されたツギエは、彼が混血児だとばれるのも時間の問題だと悟り、家を出ます。
家を出たものの貧困で彼を育てられなくなったツギエは、「エリザベス・サンダースホーム」の存在を知ります。神奈川県・大磯にある混血児を預かる施設です。彼女は手紙を出し、泣く泣く4歳のヨシアキを預けました。施設に預ければヨシアキはお腹いっぱいご飯が食べられるし、友達もできて、日常的にひどい偏見にも晒されず、彼にとって健康的な生活がおくれると考えたからです。

このエピソードからもわかるように、当時の日本では混血児(ハーフ)は強い偏見や差別を受けていました。私もそういった差別があったという事実は知っていたつもりですが、施設のあった大磯の海で子どもたちが泳いだだけで「混血児を海に入れるな」という地元住民からの抗議があったり、それから何年も経ってから「小学校の授業で日本人と混血の子どもがはじめて同じプールに入った」という記事が新聞に大きく掲載されていたりと、自分の想像・認識以上にひどく、根強かったのだと感じました。

11歳になった頃、ヨシアキは施設を通じてアメリカの養子先の家に渡ります。あたたかい家族や親友にも恵まれ、フットボールの花形選手になりガールフレンドもできましたが、それでも多くの差別を受けることになります。たとえばキリスト系学校の校長に白人ではないという理由で入学を断られたり、初恋のガールフレンドの父に「口に出して言うつもりはないが、君は娘にふさわしくない」と一方的に言われたりしました。
つまり、彼は日本でもアメリカでも、一部の人間にその存在を認めてもらえませんでした。

高校卒業後、ヨシアキは徴兵されていないのに、自ら志願して米軍に入ります。そして戦地ベトナムでその命を落としました。
彼は志願を決断した際、こう言います。

「僕はアメリカ人になった。だから、まずはアメリカ人としての義務を果たさなければいけないと思っている。やりたいことをやるのはそれからじゃないかと思うんだ」
「スティーブ……」
「それに、僕にはベトナム人と同じアジアの血が流れている。ベトナムを救いたい。ベトナムの人のために戦いたい。よく考えた結果だよ」
スティーブは毅然と言い放った。
やめろ、と言いかけて、ロンは言葉を呑み込んだ。大リーガーになれるチャンスを捨ててまで、スティーブが手に入れようとしているもの。それが何か痛いほどわかったからだった。

面高直子『ヨシアキは戦争で生まれ戦争で死んだ』P.179より引用

「アメリカ人にアメリカ人として認めてもらう方法」としての軍隊がそこにありました。
国に忠を尽くすこと。
アメリカ人としての義務を果たすこと。

当時のヨシアキは野球の才能が抜群で、大リーグからオファーが期待できる程の実力がありました。選択肢は、大学に行って野球をするか、大リーグに行ってメジャーリーガーになるか、それとも…ベトナムへ行くか。
また、軍隊で3ヶ月頑張れば、軍から一週間の休暇(リラックス&レクリエーション。通称R&R)がもらえて、好きな国に行くことができます。その際親友といっしょに日本に行って、自分が生まれ育った日本を紹介し、僕の生みの母に会いに行こうと話すヨシアキがいました。

和平はヨシアキではありません。
ですが、ヨシアキの生涯を知ると、和平が見えてきます。


HIDEOの目の前に『ヨシアキ』の本を掲げアイコンタクトしてもらったとか、そういったことはありませんが(どんなだ)、和平に「俺は戦争で生まれたんだ。だが戦争で死にたくない」という言葉を語らせた点からも、おそらくこの本、そしてヨシアキの存在が和平というキャラクターの大きなベースになっているんだなと強く感じました。そしてとてもすてきな本です。とても読みやすいので、みなさんぜひ読んでみてください。

★MGSPWカセットテープ「生い立ち」内で、和平のお兄さんはベトナム戦争で亡くなったと語られています。これはHIDEOが、あり得たかもしれないもう一つの和平の姿を彼の兄として、少しのエピソードに残したのかな…と思っています。
☆この環境下で一人息子を育て上げた和平の母、病気のせいでその母に存在を忘れられた『和平』、そんな母を喪った和平。メインキャラクターとして本名を貫き通した和平。あああ…(以下ループ)

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