もう終わりだよ映画愛好家の皆様こんばんは（もう終わりだよ映画愛好家…今決めたワード。見ながら「もう終わりだよ…」とつぶやいてしまいがちな映画が好きな人びとのことを指す）。
ボイリングポイント見ました！？私先日見たんですけど面白かったので感想書きます。

あらすじ

一年で一番忙しいクリスマス前の金曜日を迎えた英国の人気レストラン。この世の終わりみたいな予約数が入った店を回すため、全員の精神がどうなろうともなんとかしようともがき倒す、現代ブラック飲食店を90分ノーカットで描いた本作。果たして無事に閉店できるのか──！？

以下ネタバレ含む感想です。

映画館で見なきゃな〜と思いつつたまたまタイミングを逃していた本作。12月下旬に配信が始まってからゲーム部で初めて見ました。あまりにも実況向けすぎて、これうっかり映画館で見逃して逆によかったな？！枠のレア映画でした。これ映画館で無言で見るの苦痛だろ……。

スタートからすべてが壊れている本作、まず店長はあらゆる書類を正しく提出することができず空白のまま出し衛生管理者から大目玉を食らうところから本編が始まります。その後もどう頑張ってもまともに厨房が回らないレベルの予約が入っており（担当者止めろよ）、なんと食材は牛肉すらありません。店長（主人公）がうっかり発注を忘れました。いや牛肉ないの！？？！！？
いや知らないけど…なんか…牛肉ないのはヤバくない？イギリスそんなに牛肉食べない…？食べるよね…？フィッシュ・アンド・チップス文化だから魚のほうが出るのか…？でも牛肉ないのは…！？（マジで牛肉ないってなんだよ…）

この時点で「もう終わりだよ…」の声が聞こえてきそうですがまだ開店したばかりです。お店の閉店時間は0時。深夜までこの戦いは続きます。牛肉ないけど。
そしてまだ始まってそんなに経っていませんが、店長のコンディションは今世紀最悪なので自分の書類のことを棚に上げてミスった店員を怒鳴り倒すところからスタートです。エンジンかかってきたな！
当たり前ですがスタッフが皆どんどん萎縮していきます。ちょっと前から入った新人もストレスで既に死にそうな顔です。ここの定着率絶対ヤバいだろ…転職会議絶対★2とかだよ…。パワハラモラハラもう全部盛りだよ。トラウマある人は見ないほうがいい。
ちなみに主人公の店長はここ2ヶ月事務所で寝泊まりしており妻には別居されています。ネイサンという息子がいますが愛情はあるものの時間がなくまともに対応できていません。

その後もプロポーズを控えたカップル客、露骨に黒人差別してくる白人客、ゲイバーでDJをしているフロアスタッフ、40分遅刻ガール、2時間遅刻ボーイ、希死念慮ボーイ、お腹でかくなってきてる中でも過酷な労働をする妊婦スタッフ、3万人のインスタフォロワーを武器にメニューにないステーキを注文してくるインフルエンサー客（牛肉ないよ！？）など盛りだくさんです。さり気なくアレルギーのあるお客様がいたりグルメ評論家とめんどくさい経営ゴリ押し恫喝おじさん（主人公の元上司）など伏線が多い。既にもうお腹いっぱいです。こんなんトラブルの宝箱ですよ。我々はこのカオスな状況を刮目して見なければならない…。

そしてここで先に指摘しておきたいのが、完全にこの作品の構成が渡る世間は鬼ばかりの幸楽なんです。いやこの記事読んでる人間の一体何割が渡鬼視聴歴有りユーザーだと思ってるんだ…（いるのか…！？）って感じなんですが、私は過去家族の影響で何故か渡鬼実況するレベルで視聴しており（あれはマジで実況向け作品なんですよ！！！）、あの作品マジで厨房だろうが客がいる店内だろうがどこでもクソデカボイスで人の悪口言ったり嫌味言ったりとにかく私語がズラズラズラズラ出てくるんですけど、完全に同じなんですよね。これ客絶対聞き耳立ててるだろのつくり。監督渡鬼見たんか…？（？）
ちなみに渡鬼は橋田壽賀子先生が亡くなられたので続編は有りませんが、出ている最終作でピン子が料理系おばさんYouTuberになるという超前衛的なラストを迎えておりよかったです。ほんとに最後ピン子は居場所が職場にも家にもあまりにもなかったんですけどYouTuberになることによって救われたんですよ。見知らぬネットユーザーとコメントを交わすことで自分の居場所を見つけるんです。本当です。嘘じゃないんです。インターネット最高！

さて話を戻してボイリングポイントです。2時間以上遅れてきたウェイ系陽キャことジェイミーくんがゴミ捨てと称して外に出たと思ったらその流れでヘロイン購入です。英国さん！？
ここの流れマジであまりにもサラッと自然に描かれてて、この作品はさっきも書いたみたいに色んな今の英国の問題点みたいなのを洗い出してガッツリクローズアップしてるようなんですが、仕事中ヘロイン購入＆使用はさすがに驚愕したんですよね。いや…私が知らないだけでみんな仕事中にヘロインキメてるのか…？キメてます？みなさん……
そんな新たな働き方改革を実現したヘロインボーイことジェイミーくんがそのままウェ〜イｗみたいなこと言いながらフラフラ労働し、そのうち飽きてスマホでサッカー見てるのも最悪で良かったです。火の付いたタバコそのへんにポイ捨てしてるから火事ENDかと思った。
イギリス産の「オーバークック2」というゲームをやってる途中で明らかにキメてるだろこれみたいなステージがあるんですが、それの答え合わせがこれなのかい？英国…という気持ちがあります。まじでどんだけ広まってるんだドラッグ。

その後も明らかに予約超過しているレストラン。スタッフがアレルギーの事前データ入力を怠っている情報が入るホール。本来であれば決められたルール通りデータ入力→厨房確認の段取りのはずが、口頭と適当な紙のメモでやり取りされています。フラグやめろ！！！！！
作中、問題はたくさん起きていますが明らかに取り返しのつかないレベルでアカン問題を量産してるのはフロアマネージャーみたいな金髪のお姉さんだと思うんですが（予約を超過してるのにゴリ押しでスタッフ疲弊、アレルギー情報事前入力＆共有しない、重要なメインスタッフの昇給話を上に回さない）、作中の話聞いてる限りだと金出してるメインオーナー？の娘なんですよね？たぶん。あれですよね…一族経営でよくある社長の娘的な……うっ…頭が………
あと酒のめねぇって言ってる人間にアルコールを飲ませる描写が多くて、英国アルハラも問題になってんのか！？と不安になりました。私酒飲めないのでこれやられたら一発で倒れる……断ってくれ…皆…！！

そして上記のようにあらゆるイベントや伏線がバンバン流れていく中厨房の怒鳴り声が響き渡る店内。誰一人客が振り向いたり怖がったりしてないんだけどそういう文化なのか…？たまに「大声がお客様に聞こえるでしょ！？叫ばないで！」みたいなキレワードも飛び交いますがどう考えても手遅れです。絶対Google Mapのレビューにガンガン書かれてるよ。向こうにあるだろう食べログみたいなやつも炎上してるよ。
あと途中でさりげなく地方訛りネタが入ってて「英国だァ〜！！」感あってよかったです。英国地方訛りネタエクスペ振りに聞いたな。それとグルメ評論家の女の人が食事中セックスのたとえ話出してくる感じがめっちゃ「わかる〜〜〜」って感じでよかった。

そんな感じで闇鍋どころか泥船みたいなことになった人気レストラン。フロアマネージャーがトイレで泣き出しどこかに電話したり（パパ宛？）、昇給がないなら辞めますと伝えていたメインスタッフがもう限界と辞職宣言したり、盛り沢山です。何がどうなってたっけ。料理ちゃんと全部出てたっけ…？大丈夫…？ちなみに作中でずっと主人公の目はうつろかつキョロキョロしていて「これもうだめでは…」感がすごいです。俳優ってすごい。あんなに“大丈夫じゃない人”を演じられるのはプロや……本当に大丈夫じゃない目なんですよ…

そんなことをぼんやり思っていたのもつかの間、レストラン内で悲鳴が……………ああああああああ！！！！！アナフィラキシーショック！！！！！！！
さっき散々伏線貼りまくった雑なアレルギー対策はドレッシングに入っていたクルミ油が回避できず（回避予定だったが直前でドレッシングがなくなり新人ちゃんが店長の許可を得て一皿分クルミ油のものを出した）、お客様が倒れてしまいました。マジで終わりです。

素人が見ても明らかに詰んでしまったこの状況下で「大丈夫だ」「大丈夫…」とブツブツ呟く店長。全員集めて確認した結果ドレッシングが原因だと気付いた店長。終わりの音が聞こえてくる店長。
ちなみにここの言い合い殴り合いシーンで、さっきヘロインキメてたジェイミーくんが他の人の暴力を止めてるシーンが最高です。キメてようと止めないといけない暴力があるじゃんよぉ！（テニミュ）（切原赤也）
置いてあるいちご🍓（多分次に出す予定のデザート）も不安げにこっちを見てるよ…

そうして主人公はフラフラと奥の事務所にたどり着き酒を注ぎヤクをキメます。作品の最初から飲んでた水筒みたいなのに入ってたドリンク酒なのかよという最悪のネタばらしをキメられ、視聴者もドン引きです。あの水筒すごい頻繁に出てきて、かつめっちゃ飲んでるシーン映ってたので「あっ…（察し）」感がマジでエグいんですよね。そして白い粉を鼻から吸引。もう最初から壊れてたんですね。

その後、さっき息子の電話ブツ切りしたことへの謝罪を妻にして、自分は今でもヤクキメてます酒飲んでますリハビリ施設に行きますごめんなさいとすべて白状し、頬に付いた白い粉をはたき落とし、「こんなもの…！！」と酒もヤクも投げ捨て、なんとか厨房に戻るべく奥の部屋から出た主人公はそのまま店内の観葉植物にぶつかって倒れ起き上がれないまま幕を閉じ、無事に閉店できませんでし………エッ…！？

いやすごいオチですよこれ。ブラック労働ダメ絶対！もはや墓入リングポイント。完全にタイトル回収です。びっくりしてクソみたいなおもんなギャグが出るよ。終わりだよ…。
このあと全員で撮った開店でーす★って自撮り写真が出てEND。遺影じゃん。もうこれ『過労死の現実』みたいなタイトルで出したほうが良いよ。出したほうが良いのか？わからない…出さないほうがいいかもしれない……

というわけで、心が死ぬほど疲弊している際には特に勧めませんが面白い作品でした！英国社会の問題提起感も強かったな。映画自体実況ライブ感がすごいので人と一緒に見るのも面白いと思います！飲食店もしくはブラック企業労働経験者は気をつけて視聴してください！！！！！

そうそう、吹き替えで見たんだけど完全に安心して見られるタイプの吹き替え作品になってたのでおすすめです！ぜひ。
途中でラム肉が生焼けだってクレーム入れられるシーンがあるんだけど（実際に肉は生焼けではなく、黒人差別主義者がイチャモンつけたいだけ）、吹替版だと肉焼き直したあとに「焼き倒したラム肉だ」ってセリフがあってすごい好き。日常生活で使いたすぎるだろ、「焼き倒したラム肉」。