あらすじ
有名音楽プロデューサーのキング(デンゼル・ワシントン)の息子が誘拐された。身代金として今までキングが築いたほぼ全財産を要求されるが…
Apple TV「天国と地獄 Highest 2 Lowest」公式サイト
以下ネタバレ含みます!
公開前のスパイク・リー監督インタビューで「リメイクというか再解釈映画だよ」というようなことを話していたので、内容を結構変えてきてるのかな?と思いきや冒頭のニューヨークに置き換えた高級住宅(なんかすごい金持ちの家)から起承転結の承くらいまではほぼ変わらないストーリーラインでした。
最初のところのデンゼルおじちゃんヒューッ!って感じでいいよね。ニューヨーク何もかも高すぎて(物価も家賃も建物の高さも)貧乏人が見上げるみたいなのすらできなくね?と素人は思ってしまうんですが、地下鉄で寝てるオッチャンなんかの描写を見るとホームレス一定数いるらしく…ニューヨーク州だけでホームレスが15万人いるって出てきてビビりました。コミケ1日分くらいの人数のホームレスがいるの…?ど、どこに…!?
身代金関連
黒澤版の鉄道のあらゆるサイズガチで検討して大金を外に放り投げられるような脚本捻り出した話が好きだったので、デンゼルおじちゃんが連結部分に立たされて犯人の一味が車内の緊急停止レバー引いて急ブレーキからのリュック(バックパック)を真下に落とすという脚本はちょっと疑問でした。あれ片手で持つ鞄とかならともかくリュックで、連結部分に行く時も割と高確率で背負わない…?両肩にかかってたらキングさんが転んで落ちることはあれどリュックだけ単体で落ちるのは考えにくくない?
あと「いくらなんでもそうはならんやろ!」ポイントはキングが鞄を落とした映像がSNSで出回ってるという部分です。そんなピンポイントで撮れることないだろ!?敵側サイドが相手をこいつはアホで〜すって出すために撮ってSNSに流して攻撃してきたみたいなことなのか?でもそこまで考えられるタイプの犯人に見えないし…そういう描写なかったし…
警察
にしても警察が相当アホに描かれてるんですが、黒澤版は警察が本当に頑張って解決に持っていく話だったのでちょっと拍子抜け。手がかりも逮捕のきっかけも全部主人公サイドのおかげすぎる…これが日本とアメリカの差なんか…?
スパイク・リー監督が警察を賢く描くわけないだろと言われたら確かにそうなんですが(マルコムXを観た感想)、黒澤版では警察を信じて静かに待っていた主人公が今作では自ら敵の家に乗り込み家族にまで声をかけアジトにも突っ込み逃亡先の地下鉄車内で相手を物理的に張り倒すという力技解決。アメリカ、自治解決(物理)でええんか…?(警察さん…?)
あ、それとキング専属運転手の警察からの扱いがカスなのは犯罪歴のある移民に人権はねえ!かつそういう差別ガンガンかましてくる警察ってクソだわ!みたいなことなんだとは思いますが、キングがなぜこの運転手を気に入ってるのか描写が薄くてピンとこなかったので(運転手が奥様に先立たれたのは分かったけど)、そのへんの掘り下げがちょっと欲しかったかも。なんか見逃したかな。
SNS
この映画のSNS描写、なにひとつ良いポイントなかったので制作陣がSNS嫌ってるな?と思っていたんですが脚本持ってきて監督にこれやろうやって声かけたデンゼルおじちゃん自身のインタビューがこんな感じだったので納得しました。
あとグラディエーター2のマクリヌスが現代に生きてたらSNSめっちゃ使いこなしてそうって言ってるの解釈一致すぎてよかった。策略してくれ…(急に?)
ヤンキース関連描写
途中でヤンキースファンがボストンクソアンチコールで手拍子まで始めるところ、急にやばい野球ファンが登場するとは思わず声出ました。最初吹替で見てて「ボストンクソ!」とか連呼しててあまりの迫真ぶりに笑ったんですが、字幕版で同シーンを確認したら「くたばれボストン 行けヤンキース!」って書かれててさらに笑顔出ました。これは…過激派阪神ファンが甲子園行きの阪神電車内でくたばれ讀賣を合唱し始めるみたいなことなんですか…?
中でも一番怖かったのが、キングが座った席付近の広告に
WE❤️THAT HATE IS NEVER EVER TOLERATED *
*[RED SOX NOT INCLUDED].
「憎しみは決して許されない」(※レッドソックスは除く)
と書かれてたことです。いいんだ、交通広告でこの表現…これ映画用にやってるんじゃなくて現実の地下鉄で掲示されてるポスターだったりする…?もしそうならアメリカンジョークの極みみたいな存在だという理由で許されてるんでしょうか。日本で、たとえば巨人阪神に置き換えてこんな交通広告あったら3秒で炎上して関係者が謝罪しそう。ガチアイテムなのか映画アイテムなのか気になりすぎる…。
あとヤンキースタジアムを通る鉄道映画といえば「トレイン・ミッション」ですが(私調べ)、調べたら同じヤンキースタジアム前は通るけど別の線(地下鉄じゃないやつ)なんですね。この映画とトレイン・ミッションの影響でヤンキースタジアム前を通る電車全部ヤバいだろみたいな印象でまとまってしまった。
それと、デンゼルおじちゃんが無理やり扉こじ開けて地下鉄乗ったからあれってワンマン運転とかなのか?いうてドア確認危険だな?車掌は?と思いながら調べたら普通にワンマンじゃなかったので笑いました。映画ファンタジーの基本を思い出して…(映画オタクのザ・ボス)
プエルトリコ
ニューヨークに住んでいるプエルトリコ移民のコミュニティが大きいということは分かったんですがそれ以上の意味合いを持たせている感じがするのにその辺りのニュアンスがまじで全然分からない。プエルトリコのお祭りの尺的にも明らかに作品の中でも重要要素として見せてるのかなと思うんだけど意図が全然分からない。無知は罪…ごめんな、スパイク・リー…
※2回目見たら犯人の家にプエルトリコ国旗があったので犯人のルーツがプエルトリコ移民っぽいのはわかったんですが、ニューヨークにおけるプエルトリコ移民の立場みたいなものの知識がぼんやりしてるせいでピンときてません。アメリカ在住の人が奥さんのシーンや犯人を見たらおおまかに事情が分かるんでしょうか(これ2025年の話なので強い移民迫害とかが問題になってるのかな。口の悪い警察官がボロクソ言ってたし)。
このあたりが全然わかんないの、犯人が歌ってる曲の歌詞が何も表示されない(どういうラップなのか概要すら不明)っていうのがひとつあると思うんですがApple TVくんなんとかならんか!?プエルトリコ民がみんなで歌ってるシーンも歌詞が何も出なくて全然わからない!今からでも遅くないから足してくれ!!!ラップは特に!!!!ケツのボリュームがすごいことしか分からないラップ!!!!(向こうの文化として存在する女性がでかいケツをめちゃくちゃ振るやつってどういうあれなんだろう?)
それとちょっとプエルトリコ祭りの尺が長くないか?テンポを考えるならもう少し短くできたのでは?(この辺りから作品がちょっと間延びしておりもったいない…)とも思っているんですが、このシーンで出てくるピアノ弾いてるおじいちゃんがエディ・パルミエリさんという方でラテン音楽の巨匠かつ今年亡くなられていると知りました。長めなのは追悼の意味もあるのかな。冒頭で挨拶してたお姉さんも実在するアーティストだった。このあたりは音楽・アーティスト知識がある人が見るとテンション上がりそう。
ただまあ黒澤版「天国と地獄」も基本的には日本人しか「横浜の黄金町」の意味を把握しながら観てないわけなので、ここがわからないなら映画を観る資格なしなんてことはないのはわかってはいるものの、明らかにこっちの知識不足でなんかが読み取れてないな?と分かりきったシーンは無知を恥じたくなる。どなたかこの辺の意味合いをご存知であれば教えて欲しい…世界は知らないことだらけだ…
ちなみに私が知ってるプエルトリコ情報は、ニューヨーク・メッツの守護神エドウィン・ディアス投手がプエルトリコ出身だということです。
この登場かっこいいよね
レトロっぽい映像
レトロチックな映像になるカットが複数あり、どれも左側に白い四角が表示されていてなにか古いカメラを使うとこうなる?みたいな見せ方なんですがその辺りの知識がなくて分からなかった。スパイク・リーに平謝りしたいよ私は。でもこれなんて調べればいいのか分からねえ!
マッコールさん
露骨にマッコールさん(概念)に切り替わるシーンがあって笑いました。ここまで露骨にやるのは作品オマージュ的なことなのか?「正しいことをしろ」「チャンスをやる」あたりのワードチョイスも含めて。正確にはマルコムXからか?あれは“正義を行え”だけど。
音楽プロデューサーのすべてを知ってるわけじゃないけどたぶん普通のプロデューサーは銃持ってこんな目つきになることないだろ。銃社会に生きたことないからそう思うのか…?
デンゼル・ワシントンって1映画1役でずっと来ててそんなに色がなかった人だと思うんですが、最近はデンゼル・ワシントンのキャリアで唯一続編があるマッコールさん(概念)の色が強いなと感じるのはオタクがそう思っちゃうからなのか色なのか。本人がマッコールさん気に入ってることもあるのかな。あとやっぱりイメージが強すぎるしな。
そしてマッコールさん(概念)のラップバトルが観られるのはこの作品だけ!銃撃があまりにもさらっと行われてて怖いよ!そんな気軽に銃を撃つな!
ただあのシーン、(その前の犯罪は一旦置いといて)あそこで逃げずに正々堂々ラップバトルを犯人が続けてたら違ったけど彼は銃に逃げたのではっきりと負けなんですよね。あのシーンは先に銃を発砲したやつが負け。ラッパーならラップバトルで戦え。
あと片目失明?までの流れも気軽すぎる。もう運転労働できないじゃん…というか労働に対する制限が大きいよ片目…
最後の歌
出てきたお姉さんの歌がうまいことは分かるけど、歌詞も何も出ないので日本語話者我は何を歌っているのか1ミリも分からず、なんでこの曲のタイトルが「天国と地獄」なのかもわからないまま終わってしまい残念。貧富の差でも歌い上げてるのか…?
吹替版でも字幕版でも何も出ないので本当にわからない。再三になるけどApple TV先輩、ここは流石に字幕足したほうがいいっすよ…本来の作品の意図が言葉の壁のせいでわからないんだもん…
声優スタッフロール
なんかよくわからないスタッフロールで明夫の名前がないまま終わったんですが…どういうこと…?さっきまで聴いてた明夫の声は明夫じゃなかったってコト…?
作品を見る上で英語がわからないと作品の意味も拾えないシーンが多かったので、今からでも字幕を足して欲しいです。高らかに歌い上げたり小気味よくラップしてるのはわかるけど中身が本当に何もわからない。この状態でGOサイン出したの誰!日本語翻訳担当さん!!!
あと作品見て貰えばわかると思うんですが、あらゆる音楽をバンバンにかけててそれを楽しむ部分が大きいので音響の良い劇場でかけて欲しかったなというのはありました。んでもって映画館のクソデカスクリーンで迫り来るデカケツを観たかっただろうがよ……(ちなみに監督インタビューによると米国でも3週間の劇場公開のみらしい…)
なんかこうちょっと…惜しい!なんだろう…もったいない!でもデカケツMV好きだよ!そんな感想です。最後の歌、どう考えても「歌うまいなぁ!」で終わるシーンじゃないのに日本語話者だという理由で「歌うまいなぁ!」しかわからないの悲しすぎる。英語圏の人類〜!すべてを教えてくれ〜!!!